しまなみ海道の四国側から2番目に位置する愛媛県伯方島。オープン間もなくして早くも話題なお菓子屋さん「みかん、ときどきお菓子」を訪ねて島旅へ。スイーツマニアの熱い視線を集める、フランス菓子をベースにしたお菓子の背景にあったのは?柑橘とお菓子への愛情が詰まった、クリスマス限定のスペシャルボックスの中身も、余すことなくご紹介します。
週3日だけオープンする島のお菓子屋さん
お店がオープンするのは、週末のみの3日間。民家の入口に看板が立てられると、開店の合図です。ここはしまなみ海道伯方島のお菓子屋さん「みかん、ときどきお菓子」。2023年4月に生まれた、小さなお菓子屋さんです。
ショーケース…ではなく、お菓子が並ぶのは日本家屋の縁側です。こじんまりとした空間に、ちょっといいお菓子が粒ぞろいに並びます。島の恵みを存分に用いたスイーツを目当てに、地元の人はもちろん、今では遠方から訪れるファンも!
柑橘畑とお菓子への思いを胸に会社員からパティシエへ転身
迎えてくれるのは、パティシエの福田かゆりさんです。ここは、福田さんの自宅兼工房。店名が示す通り、福田さんは実家の柑橘畑を手伝いながら、週末のみ菓子店を開いています。
故郷である伯方島に戻ったのは20数年ぶりという福田さん。農学系の大学を卒業した後、情報サービスを提供する大手企業や、ダイレクトマーケティング事業の会社などに約10年勤務。その後、辻調理師専門学校の広報として9年間働いた後、なんと同グループ校の「エコール 辻 大阪」に入学して、製菓づくりを一から学んだといいます。
「実家のみかん畑が、ずっと心にひっかかっていました。日当たりのいい傾斜にある、柑橘を育てるのに、とても良い畑です。1人暮らしを始めてからは、毎年必ず実家からみかんが箱で送られてきたのですが、1人では食べきれないので友人や職場の人に配っていました。すると毎回たくさんの方が『今まで食べたみかんで一番甘い』と言ってくれたんです。そこで、我が家のみかんのおいしさに改めて気が付きましたね。父が畑に出られなくなれば、みかんも育てられません。畑作業をしながら、自宅でできる仕事を考えたとき、お菓子が頭に浮かんだんです」
「畑を、大好きなお菓子との融合で継続させていきたい」
お店のすぐ横、そして裏側にそびえる山の畑には、瑞々しい柑橘が生っています。これらを維持するのはもちろん、美味しいのに見た目だけで規格外になったり、間引かれて廃棄される柑橘をどうにか利用できないかとの思いも強かったとか。
福田さんが掲げる信条は「基本に忠実に、真面目においしいものを」。自宅の柑橘をはじめ、塩やハチミツなど、伯方島でとれる原材料から、真っ直ぐな味を追求しています。一寸の曇りがない銀色に光る工房で、ひとり、黙々と作業にふける姿は見惚れてしまうほど!
「辻調で働いていた9年間、先生や学生たちが、真摯に料理やお菓子に向きあう様子を近くで見ていました。卒業生のお店へ伺うなど、おいしい味に出あう機会も多かったですね。今では全てが、糧になっています」
人生のセカンドステージへ舵を切った福田さん。今、まさに、「みかん、ときどきお菓子」な島暮らしから、おいしい驚きを発信中です。
クリスマス限定!島のおいしいが詰まった限定スイーツセット
クリスマスを目前にして、福田さんに特別につくってもらったのが「お菓子のアソートボックス」です。「みかん、ときどきお菓子」の看板商品から、クリスマス限定の新商品まで、6種類のスイーツが計15個入ったボリューミーなラインナップに心が躍ります。
ホリデー気分を高めてくれる赤いボックスと白いリボンが、お菓子の魅力に更なる花を添えてくれます。完全受注生産のレアな機会をどうぞお見逃しなく!早速、その気になる中身をご紹介していきましょう。
・レモンケーキ
ふわっとレモンが香る生地にレモン果汁たっぷりのグラスアローをかけた、お店の看板商品。表面にはレモンの皮のクリスタリゼをトッピング。しっとりキメ細かい生地と、レモンのさわやかな酸味が口の中で溶け合います。レモンはもちろん、畑でとれた新鮮なものを使用しています。
・クリスマスリースクッキー
抹茶味のクッキーに、自家製レモンピールとホワイトチョコレートをトッピング。リースをイメージした、クリスマス限定のお菓子です。今回のために特別に作ってもらった、スペシャルかつ上品な一品。
・パート・ド・フリュイ
みかんの果汁に、砂糖や水あめなどを加えて濃く煮詰め、ペクチンで固めたゼリー状のフランス菓子。グミに近い食感で、みかんの味を存分に味わえます。
・島はちみつフィナンシェ
伯方島産のはちみつを用いた、一口サイズのフィナンシェ。アーモンドパウダーにプラスして、ヘーゼルナッツパウダーも加え、ナッツの香りも楽しめます。柑橘の花からとれるはちみつは、爽やかな香りをまとう贅沢な素材。優しい甘さがうれしいフィナンシェです。
・ブールドネージュ
フランス語で「雪の玉」と呼ばれるクッキーです。卵を使わず、バターと砂糖、粉類だけで作られており、ホロッと繊細なくちどけです。丸くころんとした形もキュート。
・サブレブルトン
バターの風味と塩味が効いたフランス菓子です。伯方島の特産品「伯方の塩」の「フルール・ド・セル」を表面に添え、カリッとした食感を味わえます。ほんのり甘じょっぱい、重厚感のあるクッキーです。
(左上から時計回りに)
奇をてらわず、上質。福田さんがつくるお菓子には、人を惹きつけてやまない魅力があります。フランス菓子をベースに島のエッセンスを加えた、シンプルで真面目なお菓子。さりげなくも贅沢な、おいしい幸せを自分に、そして大切な人に。眺めていても、器に盛っても幸せな気分にさせてくれる、お菓子のある時間へようこそ!
SOLD OUT
おかげさまで予定数量を完売いたしました。
取材・文・写真/大須賀あい