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足に寄り添い履くほど育つ本革 気分も上質になるレザースリッパ

足に寄り添い履くほど育つ本革 気分も上質になるレザースリッパ

「おしゃれは足元から」という言葉があるように、お気に入りの靴を履いて出かける時には、なんだか身軽な気持ちになるものです。尾道でセミオーダーの革靴を展開する「イチリヅカシューズ」の靴は、履くとスッと包み込む優しさがあります。尾道へUターンした靴職人・藤山さんの人生の歩み、暮らし方、そしておうち時間に快適さをもたらす1足として頼れる、レザースリッパを紹介します。

 

 

尾道でオーダーする世界に1足の自分専用シューズ

線路下の細い道をくぐって、尾道の山手に上がる石の階段を少し登ると見える「イチリヅカシューズ」。ひとりひとりに合わせたオーダーシューズを手掛ける製靴店です。お店の名前は、同店の旧地名に由来しています。

 

 

 

 

こちらで靴をつくる方法は主にひとつ、ただ訪ねること。オーダー靴というと敷居が高く思われがちですが「イチリヅカシューズ」にそんな気負いは必要ありません。1963年に建てられたコンクリート建屋の1階の工房には、尾道旅行の途中に立ち寄って、靴をオーダーする人も多いとか。

 

 

 

 

工房内には、さまざまな形や色のオーダーサンプルが並んでいます。ブランドの一番の特徴は、足先が丸く、コロンとしたラウンドスタイル。オランダを象徴する伝統的な木靴からインスパイアされたという形は、男女問わずジェンダーレスに使えるデザインが魅力です。

 

 

 

 

素材として使われるのは、主に柔らかい履き心地と色バリエーション豊富なイタリア革。履き込むと味わいを増し、時と共に色合いが深まります。

 

絶妙な色合いが美しい、縫い合わせのない一枚革でライナーをつけずにつくる靴は、ラフでやわらかな足当たり。オーダーから引き渡しまで約半年という長い時間をかけてつくられる、シンプルながら、上質で、タイムレスなシューズなのです。

 

 

 

尾道移住で見つけた家族との幸せな生活と新しい生き方

靴づくりを手掛けるのは、尾道へUターンした靴作家の藤山なおみ(とうやまなおみ)さんです。

 

 

 

 

広島県西部出身の藤山さんは、大学進学を機に関西へ。卒業後に勤務した印刷会社やコピーライターの仕事で幾度もヨーロッパへ訪れ、現地の雑貨や民芸品に魅了されたとか。そして、大阪にて輸入雑貨店「チャルカ」を立ち上げ、仕事に多忙を極めていたといいます。

 

 

 

 

「ふと気が付くと、長男が10歳、長女が5歳になっていました。私が忙しくしている間に、いつのまにか大きくなっている子どもたちを見て『このままじゃいけない』と思ったんです」

 

そんな気持ちに追い打ちをかけるよう、生活を一変させるできごとに襲われました。東日本大震災です。これまでの価値観が180度変わったという藤山さんは、雑貨店を辞め、1ヵ月間のヨーロッパ旅行へと家族で出かけます。

 

 

 

 

その時、現地の蚤の市で見つけた子ども用の靴が、靴職人を目指す第一歩となります。ドット柄のキュートな小さい靴は、娘さんには小さくてはいらなかったとか。

 

「私にあう靴を作ってほしい」

 

娘さんの一言がきっかけとなり、日本に戻って靴づくりのワークショップへ1年間通った藤山さん。あわせて、移住の地を考え始めます。その時あがった候補が、音楽家として活動する夫・トウヤマタケオさんが話す尾道という街でした。

 

「昔建てられたおしゃれな空き家が安く借りられると聞いて『尾道空き家再生プロジェクト』にすぐ連絡しました。3日後に空き家巡りをすると聞いて、私1人で尾道に向かったんです。半年後には、今の家を見つけていました」

 

 

 

 

そうして2013年、家族で尾道に移住。もとは、学校の校長先生のおうちだったというコンクリート造りの無機質な家に惹かれ、置かれていた家具などはそのまま使いつつ、家族総出でDIYに取り掛かったといいます。そうして、翌年の2014年にオープンしたのが「イチリヅカシューズ」です。

 

「不安は全くなかったですね。尾道は、移住者も多く、ものづくりをする人も多い。1人知り合いになると、同じような感性を持つ人とスルスル繋がっていくんです。大阪では生きるのに精一杯。子どもたちが大きくなった今は、靴づくりとバンド活動、そして最近始めたオフグリッド生活が一番楽しいかな。今の生活は、尾道じゃないとできなかったと思います」

 

 

 

 

お店のすぐ前には、線路が通っています。ガタンガタン、時折通る電車の音。カンカンカン、靴を作る音。尾道を彩るたくさんの音が、工房内に優しく響いています。

 

 

生命力に満ち溢れたシンプルで上質なオフグリッド生活

10年スパンで人生を見直していると話す藤山さん。昨年、工房とは別に、尾道に隣接する三原市の山中に新しく家を構えました。

 

 

 

 

過去、病院だったという古い建物を、時間をかけプランを考え改装し、住まいの拠点を20228月に移したという藤山さん一家。それは全て「オフグリッド生活」を送るため。この家には、電力会社の送電網も接続されていません。加えて、都市ガスや水道というインフラもあえて通していないのです。

 

 

 

 

自然光が気持ちよく入る家の中は、藤山さんの好きが凝縮されています。チリ製のキッチンストーブ、アンティークの調度品、そして高原地の冬をしのぐ薪ストーブ。壁には、10㎝厚の羊毛断熱材、床下に敷き詰められているのは、断熱材代わりになるもみ殻です。家そのものが自然に優しく、無駄がそぎ落とされた暮らしそのものが、神々しいまでの雰囲気を放っています。

 

 

 

 

 

太陽光パネル8枚だけで電力を自給、水は井戸から、トイレは微生物の力で排泄物を堆肥にかえるコンポスト式。利便性から離れ、一見ストイックに見える生活を選ぶ理由を、藤山さんに聞くとこう返ってきました。

 

 

 

 

「地震や水害など、あらゆる災害が起こるたびにインフラが止まり、生活に困ってしまう時代です。これから食料飢饉も起きるかもしれない。自分たちの手が届く範囲で生活を独立させる方法は理にかなっていると思ったんです。梅雨時期などに自給電力が足らなくなったら、それはそれで『無い』生活を楽しめばいい」

 

 

 

 

映画「人生フルーツ」にも影響されたといいます。

 

「あの映画を見て、良い土をつくることが私たちにできることだと思ったんです。20年、30年後、私たちの子どもがここに帰ってきたいというかはわからない。でも我が子じゃなくていい。次世代を担う誰かが、ここに住みたいと思える場所をつくりたい。何の穢れもない、サンクチュアリかな」

 

人の評価に左右されず、自分基準をしっかりと持つ。それはきっと自分を信じる強さでもあるでしょう。時間や手間を惜しまないのも、藤山さん自身や、つくるものを形成する要素。藤山さんから感じるのは、ただ美しいだけではない、強さと逞しさ。そして生命力に満ち溢れるパワーなのです。

 

 

 

 

ふと藤山さんの足元を見ると、木の床にしっくり馴染む革のスリッパが。こちらが「SETOUCHI+」で展開する「イチリヅカシューズ」のプロダクトです。

 

それでは、履けば履くほど持ち主の足に馴染み、自分の足に心地よくフィットする革製スリッパを紹介していきましょう。

 

 

 

経年変化を愛おしむワンランク上のスリッパ

尾道の工房で、一足ずつ丁寧に仕立てられたレザースリッパは、肌当たりがやさしく、革靴と同じように履き込むほど足に心地良くフィットしてくれます。

 

 

 

 

レザーは、イタリアで唯一ピット槽なめしを継承する有名なタンナーにより、高品質なバフィングフェイスレザーに仕立てられています。フランス産の良質な原皮を使い、植物性の天然成分で作られたタンニンで鞣された後、手作業でバフ加工を施すことで、優しい手触りとマットな表情を演出。サイズは、MLの2サイズ展開。性別問わずに使えるため、大切な人とお揃いにしても。

 

 

 

 

カカトを踏んでも使える仕様は、サッと履ける便利さを追求。長く履くときなどフィット感を楽しみたいときは、カカトを起こしてきちんと履くこともできます。靴底にはクッション性を持たせ、コンフォートな履き心地でおうち時間を彩ります。太さ0番手の白いミシン糸で施されたステッチは、カジュアルにもちょっぴりモードな空間にもぴったりとマッチ。カラーは、グレーに近い「スモッグ」という絶妙な色合いです。皮の仕上げも、スエードに似た雰囲気を持つバフ仕上げ。つま先が少し開いているため、通気性にも優れています。

 

 

 

 

手仕事のため、1足ごとに多少の違いが生まれるのも「イチリヅカシューズ」だからこそ。また、革に本来備わっている吸湿性が、快適さを後押ししてくれる点も見逃せません。アウトソールは、フランス製。フローリングでも心地良いグリップ力を発揮します。

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消耗品のように次々と履き替えるのではなく、まるで大切な革靴のように、お手入れしながらずっと愛用できる逸品。履き込む過程で付いてしまったちょっとした傷さえ、味として楽しめるのが「イチリヅカシューズ」の室内履きです。経年の変化とともに、愛おしいスリッパとなってくれるでしょう。

 

それはきっと、傷やシワのひとつひとつに私の日々が、家族や友人、愛する人との日々が刻まれていくからだと思います。1日、1年の幸せを少しずつ、レザーのスリッパに積み重ねて。

 

 

TEXT&PHOTO/大須賀あい

 

 

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「大好きな私」をいつも一緒に

 

 

いつも、可愛らしくて、おしゃれで、元気で、自信にあふれている、私が一番大好きな「私」でいたいと、世界中のみなさんが思っていることでしょう。

しかし、ついつい仕事に追われ、時間に追われて、「私」は後回しになってしまいます。

今回、お会いした「イチリヅカシューズ」の藤山さんは、家族が大好き、人が大好き、音楽が大好き、そして自分が大好き。大好きに妥協しない強い方です。一緒にいるだけで「私も大好きな何かをしなきゃ!」と、焦ってしまうほど。

藤山さんの作るスリッパは毎日、部屋で身に着けるものです。私が「私」にもどる時間に、きっと足元から「大好きな私」を元気にしてくれます。

尾道の線路沿いの靴屋さんはあかるい光の射す工房で、今日もハナウタ歌いながら大好きな靴を作っています。

 

SETOUCHI+バイヤー 松枝修平

 

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