尾道では柑橘をつかったさまざまな加工品に出会えます。その中でも、自然サイクルに合わせたそのときどきの味を大切にする「尾道柑橘工房」でつくられる柑橘スイーツは、熟練パティシエの手にかかったもの。今回は、柑橘産業を次世代に繋げる取り組みから生まれた、夏に食べたい「オノミチアイス」をご紹介。ひと口に柑橘といってもまるで違う果実の味を、ひんやりアイスキャンディーでどうぞ!
島の柑橘に魅せられたパティシエの工房を訪ねて
日本有数の柑橘産地、広島県尾道市の「生口島」。そこに柑橘加工に詳しいパティシエがいると聞き、島内の「尾道柑橘工房」を訪ねました。出会ったのは、元気をもらえるビタミンカラーのアイスキャンディー。どれも、瀬戸田エリアの柑橘を用いてつくられています。
噂のパティシエは、お菓子づくりに携わって25年という原山奈美さんです。雪深い県北の東城町で生まれ育った原山さんは、パティシエの道を志し京都の製菓学校へ。京都の老舗和洋菓子店、広島県福山市で長年愛されるレストランに勤めた後、単身フランス修業にも赴いたといいます。結婚を機に因島へ移住し、自身のお店「因島しまなみお菓子工房 プチフール」を2006年に開業。地元に根付いたお店として愛された他、因島発祥の柑橘である八朔の果皮を使ったスイーツが全国的ブレークをするという偉業も成しました。
長年、第一線で走り続けた原山さん。「一度休憩を」とお店は2017年に閉店しましたが、「もう一度、柑橘に特化した加工を」と、2021年、現在の場所に「尾道柑橘工房」を借りたといいます。
「パティシエという職業で地域にどう貢献できるかを考えたら、私にできることは、やはり地域産物の『加工』だったんです。農家さんがしっかり稼げて、農業を維持できて、地域全体で豊かに暮らしていく未来がくればいいと思って」
そう話す原山さんの工房内で見かけたのは、瓶に入ったたくさんの柑橘ジュースです。
規格外の柑橘や皮に傷が入った柑橘は、生果で販売できません。少しくらい傷が付いていても、柑橘は問題なくおいしく食べることができますが、売れないため搾汁してジュースにされます。しかし、そのジュースも売れ残ってしまうという声が原山さんを動かしたとか。
島の柑橘の価値を高め、地域の農家をサポートすると共に、産地全体の持続可能な発展を目指し、ドライフルーツやジャム、そしてアイスキャンディーなどの加工に日々勤しむ原山さん。
「仕事は全く苦じゃないんです。1日中、お菓子をつくっていたい。加工していたい。『好き』って思える仕事があり、実際にやらせてもらえるのは農家さんの存在があってこそ。ありがたいですよね」
取材日は、冒頭で紹介したアイスキャンディーの製造真っ最中。実はこのアイスキャンディー、最近完成した新作ではなく、2021年には一度市場に出回っていたといいます。時間の空白が気になり原山さんに聞くと、2年前に最愛かつ最高の理解者であった旦那さんを病気で亡くされたとか。
しばらく稼働していなかった工房に、再度明かりが灯り始めたのは、実は最近のこと。今、アイスキャンディー製造機は静かに動き始めています。大きな鍋には黄金色に染まった輪切りの柑橘製品が。それらはきっと、「今」を生き続けてきた原山さんの覚悟の証。
「何も嘘をついていないから、記事は好きなように書いてください」
真っ直ぐに生きる原山さんがつくるものには、スイーツとしての深み、パティシエとしての深み、そして、人としての深みがあります。
それは、悩んだときに真摯に向き合った人のみ得られるギフト。
生産者とつながり、その土地の食材を使い、自身の思いまでをものせる。ただおいしいだけではない「尾道柑橘工房」のスイーツは、きっと、日々のおやつの時間に新たな豊かさをもたらしてくれるでしょう。
「個を」活かし素材本来の味を楽しむ「オノミチアイス」
今回お目見えする商品は、暑い夏にぴったりのアイスキャンディー「オノミチアイス」です。種類は4種類、しらぬひ3本、はっさく3本、せとか2本、みかん2本、計10本入りのセットでお届けします。
左から、しらぬひ、はっさく、せとか、みかん。どれも同じように見えるルックスですが、味は全く異なります。
しらぬひ/ヘタがぷっくりとふくれた特有の愛らしいフォルムの柑橘。濃厚な甘みとまろやかな酸味が楽しめます。
はっさく/尾道市因島が発祥。独特のほろ苦さの中に、上品な甘さを味わえます。
せとか/柑橘の大トロとも呼ばれる濃厚さが特徴的。コクと甘みを楽しみたい人におすすめです。
みかん/誰もが知る代表的柑橘。甘みや酸味、香りにほろ苦さなどのバランスがよく、老若男女が好むクセのない味わいです。
アイスキャンディーのベースは、瀬戸田エリアで採れた最高品質の果汁100%柑橘ジュース。保存料や着色料などは使われておらず、砂糖などで味の調整はしていない、柑橘そのままをダイレクトに味わえる贅沢なアイスです。
「同じ柑橘でもつくる農家さんによって味が違うんです。苦いも酸っぱいもあっていいんじゃないかなって。その個性を楽しんでもらいたい」と原山さん。
人もフルーツも、みんな違って当たり前。「個」を大事にしたアイスキャンディーです。
アイスの棒には、何やら文字が透け見えます。これは食べてからのお楽しみ! 食べ終わった後に、にっこり笑える瞬間が待っていますよ。
夏の救世主となる冷たい柑橘アイスキャンディー
こちらの商品は完全受注販売品です。発送は8月7日(水)を予定しており、お盆が始まる8月9日(金)前後にはご指定の場所へお届けします。親戚、友人、子どもが集う夏の日に、さっくりシャリシャリとした食感が楽しいアイスキャンディーを。透き通るような爽やかな味わいに、ひとつ、またひとつと手が伸びてしまいます。
お風呂上がりやおやつ時間に、ホッと一息つきたい時に……、気が付けばあっという間に冷凍庫からなくなっているかも!?
取材・文・写真/大須賀あい