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築128年の歴史紡ぐ古蔵で醸す
尾道仕込みのクラフトビール

築128年の歴史紡ぐ古蔵で醸す<br> 尾道仕込みのクラフトビール

フルーティーでアロマティックな香り、甘みや酸味、苦みなどさまざまなテイストを五感で感じるクラフトビール。昨今、小規模な造り手による個性豊かなクラフトビールが全国に広まる中、瀬戸内の恩恵をたっぷり受けたビールをつくる醸造所「尾道ブルワリー」が注目を浴びています。グラスに注がれるのは、安心安全かつ、造り手の思いがこもった、幸せな大人の飲み物。広島県尾道市の一画から、人々の喉だけでなく心も潤す、晴れやかなビールの話をお届けします。

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千葉から尾道へ、移住夫妻が開業したブルワリー

 尾道本通り商店街入口を東に歩くこと約15分、モノトーンの扉と風になびくフラッグが目に留まります。ここは「尾道ブルワリー」。2021年に誕生した、クラフトビール醸造所です。タップルームを併設し、ビールマニアはもちろん、地元の人々や観光客がフレッシュなビールを求めて立ち寄ります。こちらでいただけるのは、尾道産の副原料、尾道の水を仕込み水として用い醸造する、「メイドイン尾道」のクラフトビールです。

 

 

ウェルカミングな雰囲気は、誰もが陽気になる「ビールが持つ力」によるものだけではありません。出迎えてくれるのは、ブルワリーを経営する佐々木真人さんと真理さん。夫妻が持つ、誰もを包み込むような安心感、気取らない優しい気遣いも、人が自然と集まる理由の1つ。今、2人が造るビールを飲みたいと、この場所へ足を運ぶ人は少なくありません。

 

 

 

2020年、千葉県から尾道に移住した夫妻が「尾道ブルワリー」を開業したのは、翌年2021年のこと。50代、定年を待たずして新しい人生を歩み始めた理由は、さまざまな葛藤とたくさんの出会いにありました。

 食品会社役員として身を粉にして働いていた真人さん。お正月以外は日々の睡眠3時間というタフな毎日を過ごし、心と体を壊してしまったといいます。良くなったり悪くなったりを繰り返すこと約10年。ストレスフルな生活からの脱却は、真理さんの一言でした。

 

「仕事を辞めて、2人で、どこかでクラフトビールをつくってみない?」

 

そこから、ブルワリー開業に向け、2人は駆け抜けます。もともとビールが好きだったこと、旅行で出かけた和歌山県の熊野古道「近露」で自分らしく生きるヒントをもらえる人に出合ったことが引き金になったとか。「ビール」と「地方」、この2つのキーワードを軸に、人口や産業を加味しつつ、醸造所がない土地を調べ、移住先候補を全国10カ所に絞ります。その1つが、ここ、尾道市。過去、サイクリングを楽しみにしまなみ海道を訪れ、印象に残る地でもあったそうです。

 

 

2人は東京で開催される各地の移住説明会に参加します。しかし当初の第一希望であった土地の担当者に「クラフトビール」の話題をふっても、いまいちの反応が返ってくるばかり。

 

「困ったなぁ…って帰ろうとしたら、エレベーター横の電光掲示板に『広島県移住フェア明日開催』って文字が流れたんです。翌日、尾道市のブースに行き、クラフトビールを造りたいという思いを話すと、移住コーディネーターさんの反応がすごく良くて話が盛り上がりました。クラフトビールに対する温度が違いましたね」

 

 それから夫妻は、本格的移住と起業、物件探しのため、1ヵ月に1度の頻度で千葉から尾道を訪れます。立ち寄った飲食店で「尾道でクラフトビールを造りたいんです」「造ったらぜひお店に置いてください」「醸造所になるいい物件はないですか」と名刺を配り、情報収集と人脈を広げていきました。望むような物件がなかなか見つからない中、数カ月後のある日「古い蔵の借り手を探している」と一本の電話が入ります。

 

 紹介されたのは、1894年に建てられた古い蔵。もとはガラス問屋の蔵だったためか、重いものに耐えうる大きくて立派な梁に、2人は感銘を受けたといいます。

 

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「ここしかない、ここでやりたい」

 

柱は崩れかけ、土壁はボロボロ。埃にまみれ、お化け屋敷とも呼ばれていた古蔵を、綺麗に改築。醸造所の食品衛生許可に対応するため、梁や柱にはガラスコーティングを。壁には土佐漆喰を。約130年の歴史を持つ蔵が、尾道の歴史を繋ぐビール工場へと生まれ変わりました。

 

「あの一本の電話をかけてもらえなかったら、そして私があの電話を取らなければ、私たちは今、尾道にいません。全ては、人との出会いです。すごいですよ、出会いって」と微笑む真人さん。ブルワリー開業に向け、有志が集うチーム「尾道ブランディング」も立ち上がりました。古蔵の大家さんの声かけで、醸造所の施工者、ラベルのデザインをするデザイナーなどが集結し、夫妻の開業をサポートします。

 

偶然と必然、人と縁、情熱と感動、全てが折り重なって生まれた尾道のビール醸造所は、どこか厳かで懐かしく、温かい雰囲気に包まれています。

 

 

底抜けの愛情を込めて、ビール造りの境地を目指す

夫妻にとって、ゼロからのビール造り。その手法は「栃木マイクロブルワリー」で、みっちりと一カ月かけて教わったそうです。ウィークリーマンションを借りての修業生活では、ビールの造り方だけでなく、ビール業界のイロハ、経営方法、販路の広げ方まで学んだとか。

 

 

おいしいクラフトビールを製造するため、日々の細かな作業と努力を欠かさない佐々木夫妻。ビール作りの命と言われる洗浄作業を徹底するのはもちろん、発酵から熟成の過程を経てビールが出来上がるまでの約1ヵ月間、糖度や味、香り、温度を定期的にチェックします。

 

 

 

この日も発酵の進み具合を、丁寧に確認していた真理さん。日々の記録を綴るノートには、数字だけでなく、ビールの様子を克明に記したメモ書きが並んでいました。それはまるで、我が子の成長記録を残す親のようです。

 

 

 

そして「穏やかな気持ちでビールを仕込んでいる」と、真理さん。アルコール度数が低いビールは、デリケートな扱いが必要とされます。特にビールは繊細で「生き物」と呼ばれるほどです。酵母、ホップ、麦芽、果実や野菜、さまざまな生物の機能を最大限に生かした飲み物を更においしくするのは、夫妻が持つ優しさと穏やかさ、そして最大級の愛かもしれません。

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飲みやすさを追及した地域密着型クラフトビール.

「ビールが苦手でも飲める、おかわりしたくなるクラフトビール」をコンセプトに、昨年1年間で夫妻が造ったビールは15種類。その副原料全てに、尾道の農水産品が使用されています。レモンやみかんは、その代表格。柑橘パラダイスとして知られる尾道しまなみエリアの土地性を活かし、ビールへと反映。果物の皮を一つ一つ剥き、果汁は手搾りして加え、手間ひまを惜しまず、素材本来が持つパワーを活かしています。

 

 

 

SETOUCHI+」がセレクトしたのは、「尾道ブルワリー」の定番人気商品です。

左から「尾道IPA「尾道エール」「しまなみゴールデンエール」。

 

 ホップの芳醇な香りと苦みを最大限に楽しめる「尾道IPA」。クラフトビールをよく親しむ人にはぜひ試してもらいたいビールです。爽やかさと甘酸っぱさ、そして独特な苦みがある八朔を使用し、軽いアロマも一緒に喉を通ります。コップに注ぐと現れるモコモコの泡。口中に広がる豊かな味わいなど、絶妙なバランス感が魅力の、毎日飲みたくなるビールです。

 

ビールは少し苦手という人でもゴクゴク飲めるのが「尾道エール」。尾道にエールをという思いを込め名付けられたビールです。国産レモン発祥の地と言われる、尾道産レモンを使用しています。レモンの甘酸っぱい風味がふわりと広がり、気持ちよく喉を潤します。冬から春にかけては、イエローレモン、7月から9月は完熟レモン、秋はグリーンレモンと、その時期に収穫されるレモンを使用。季節毎のレモンの味わいを楽しめます。

 

青いラベルが瀬戸内海を想起させる「しまなみゴールデンエール」は、副原料として石地みかんを使用。数あるみかんの中でも糖度が高く、まろやかな味わいの柑橘を加え、爽やかな香りと麦芽の心地よい苦みが一瓶に詰め込まれた黄金色に輝くビールです。国内最大のクラフトビールコンクール「ジャパン・グレートビア・アワーズ2022」の2部門で銅賞を受賞。「私たちの成長を見てもらうためのビール」と真理さんが話す「尾道ブルワリー」のフラッグシップビールです。

 

 

 

 

 

 

高品質なビールへの探求を続け、心を込めてビール造りに励む佐々木夫妻。大量生産できない小規模のブルワリーだからこそできる自由な発想と地域の人々の協力によって、今日も多種多様なクラフトビール造りに専念しています。佐々木夫妻に、尾道仕込みのビールに込める思いを伺いました。

 

「コロナ禍では悪者扱いもされた飲み物だけど、飲み方を間違えなければ、ビールは人を楽しませ、人を幸せにします。僕たちが造るビールをおいしいと言って飲んでもらえる。こんな嬉しいことはありません」と真人さん。

 

「私は過去、旅行会社で働いていたので、何か旅行に絡むような事業をしたかったんです。ビールを通して尾道を、全国の方にアピールしたいという気持ちで造ってます」と真理さん。

 

 

 

 

数あるビールの特徴やストーリーを知り、飲む1本を選ぶという行為には、何か特別で自分なりの意味を見出す喜びがあります。そして大人になってビールを飲み始めた以降の人生を振り返ったとき、「幸せな思い出」や「豊かな人との繋がり」がたくさんあることに気が付きます。友人と未来について真面目に話す場には必ずビールがありました。仕事終わり、1日の最後にヘトヘトになり辿り着いたバーで飲む、染みるほど美味しかった1杯のビールもありました。親友の結婚式、喜び溢れる会場に集まる人々の右手にはビールがありました。他にも、数え切れない、それでも鮮明に覚えている大切で楽しい記憶の中には大概ビールがあるように思います。

 そんな幸せな1日に、そして1日を幸せにする1杯として選ぶ尾道のビール。忘れられない味と思い出を、瀬戸内の緩やかな海風にのせてお届けします。

 

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TEXT&PHOTO/大須賀あい

 

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BUYER'S RECOMMEND

尾道ブルワリー推し!メイドイン尾道のビールができました!

 

 

 

今、尾道を愛する地元民や、尾道が好きで訪れる旅人がこぞって「尾道ブルワリー」を応援するワケは、私たちのビールが出来たよ、という嬉しさではないかと思います。

大麦とホップ以外の食材、つまり副原料となる果物や野菜は全て尾道産で、レモン、八朔、など丸ごと生の原料から仕込まれています。添加物は一切使用されておらず、まさに瀬戸内の風味際立つビールです。小粋で洒落たラベルも尾道のデザイナーの作品で、まさに「メイドイン尾道」。豊富な柑橘類や農作物に恵まれた瀬戸内・尾道と、手作りビールに愛情を注ぐブルワリーの出会いが、尾道ビールを誕生させました。多くの方に瀬戸内の風を感じながら、クラフトビールを楽しんでもらいたいです。

 

SETOUCHI+バイヤー 村上直美

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