尾道の商店街を南北に繋げる小さくて細い路地。小路と呼ばれる数々の細道には、尾道の歴史を現した名がそれぞれに付けられ、ただの通り道ではない、風情と風格を放っています。今回ご紹介するのは「荒神堂通り」。昭和レトロが連なる小路を、ちらりと覗いてみましょう。
商店街から海側の商工会議所方面へ向かう、一層レトロな雰囲気を漂わせているのが、荒神堂通りです。
地域の人たちの生活道として、そして日々欠かせない食料品などを販売する商店などで活気づいています。
尾道の他の小路に比べ、少しだけ道幅が広く、あらゆる商店の看板が軒を連ねるのには、歴史的な背景を語らずにはいられません。
その歴史は大変古く、遡ること江戸時代以降。尾道中央桟橋に一番近いこの通りは、大変な賑わいを見せていたそうです。つまりは、尾道の目抜き通り小路。
また、商店街を挟み寺小路へ向かうと、そこには千光寺道。千光寺へ向かう一番近い通りとして、参拝客で溢れていたとか。
現在はシャッターを下ろす店が多く見受けられますが、その姿は威風堂々。どれだけ長い間、人の行き交いを見守っていてくれたことでしょう。
いつ設置されたか不明なレトロ看板も、そのままに。もちろん現在でも営業しているお店や新しく開店したお店など多々営業していますが、ヴィンテージな看板を見る限り、文具店、玩具店、洋品店など多ジャンルな店舗が連なっていたことがわかります。
昼間の荒神堂通りはもちろん、ぜひ立ち寄っていただきたい時間帯が夜です。
もちろんお店は開いていませんが、看板だけが煌々と光る通りがそこに。
短い小路を照らすのは、ネオン看板。
そして空間を満たすのは、小路のスピーカーから流れる、ジャズを思わせる昭和な楽曲。
音楽に呼応するように響く、自分の足音。
さながら映画のセットのようですが、これはリアルな尾道の一画。
一体、今どの時代にいるのか分からなくなり、まるで映画の主人公になったかのような不思議な気分に包まれるのです。
筆舌に尽くしがたい、独特の雰囲気を持つ荒神堂通り。
今日も静かな夜の尾道を歩く私たちを、演出ではない本物の異空間へと導いてくれます。
TEXT&PHOTO/大須賀あい