私たちの生活だけでなく、依然として企業活動に大きな影響を与えている新型コロナウイルス禍。広島でも、既存販路の維持に困っている中小企業は少なくありません。そこで支援に乗り出したのが広島県です。県主催の小売業ECイノベーション実装支援プログラム「EC D-EGGS」を立ち上げ、チャレンジする企業を公募。その採択事業者6社の中の1社が、瀬戸内プロジェクトを今まさに遂行する、まるか食品株式会社です。当プログラムの目的やポテンシャルを、広島県商工労働局イノベーション推進チーム担当課長、亀本健介さんに伺いました。
成功モデルを横展開し広島に豊かさを
外出自粛により、家で過ごす楽しみが定着するなど、消費者の価値観が変化している昨今。実店舗でのビジネスを主体としていた小売業者や製造業者は、消費活動の機会を損失しているのは確かな事実です。広島県は、県内企業をバックアップする体制の1つとして、EC等を活用してニューノーマルに対応した事業モデルの創出を目指す、小売業ECイノベーション実装支援プログラムを立ち上げたといいます。
「コロナ禍で小売業の方々は大変厳しい状況にあります。そこを支援するには、何が必要なんだろうと関係者にヒアリングしたところ『これからは対面の形での売上は難しいので、ECを展開していきたい』というお声が多々ありました」
実際、小売業の物販系分野のEC市場は、対前年比で2019年は8.1%、2020年には21.7%と右肩上がりで伸びていると話してくれた亀本さん。また、ECを導入することによる利益の増加だけでなく、プラスの未来を県内に広めることが重要と語ります。
「これまでにない新たなビジネスモデルを創出し、成功事例を作る必要があると考えました。模範になるような事例を県内の小売事業者さんに横展開し,参考として頂きたいのです。つまり、採択された6社だけを応援しているつもりはなく、たくさんの事業者さんにメリットを享受してもらいたいと始めたプログラムなのです」
持続可能なモデルケースとファンづくり
一方、ただECへの販売に舵をきるだけでは、確実な売上げ増は見込めないでしょう。コロナ終息後の変化を見据え、手を打ち始めることも重要です。県が求めたのは、ウィズコロナ、アフターコロナにおいても打破できる策でした。
「本プログラムでは、さまざまな知恵を出していただきたいと応募事業者様にお願いをしました。まず大きなポイントは『お客様をどう取り込んでいけるか』にあります。ただ単発で商品を買ってもらうだけでは、永続的な売上げに繋がりません。補助金を使い広告を打ち出せば瞬間的には売れるかもしれませんが、持続性がありません。ただ売れるのではなく、ずっと売れ続ける仕組みを作っていただくのが大前提でした」
作って終わり、宣伝して終わり、ではなく将来にわたって収益を安定的に確保するための改革、また、消費者に長く愛される力も重要になってきます。
「顧客を確保したら、ブランドのファンになってもらえるような仕組み作りも条件でした。ブランドに愛着を持ってもらい、自らSNS や口コミで発信してもらえるような体制作りです。ファンと共にブランドを育てていけば、リピーターが増え、お金をかけずとも売上が続いていきます。まるか食品さんは、SNSでのファンコミュニティーづくりや、ECサイトでのアンバサダープログラムを考えていらっしゃいます。その点を高く評価させていただきました」
広島を代表する息の長いブランドへ
これまで誰もなし得なかったスケールの大きいプロジェクトは始まったばかりです。まるか食品、そして「SETOUCHI+」プロジェクトへの期待は高まります。
「瀬戸内、そして広島ブランドを全国に発信する主役になってもらいたいと思っています。最近は東京の『ひろしまブランドショップTAU』など、首都圏では広島の商品を売り込むよう努めていますが、まだまだ全国的に広島が知られていない現状です。また、ECは場所の壁を越えていけるものだと思います。是非『SETOUCHI+』ブランドにたくさんの仲間を集めていただいて、全国はもとより越境 ECも含め、世界に広島を発信してくれることを期待したいと思います」
「息の長いブランドになってもらいたい」と最後に話してくれた亀本さん。世代を超え、時を超え、国境を超えていく「SETOUCHI+」が、広島の未来を照らしてくれると想像すれば、閉塞感を感じるコロナ禍にも、明るい希望が見えてきそうです。
TEXT/大須賀あい 写真/瀬戸内プロジェクト