カラフルな色彩に、どこか北欧の雰囲気を感じるモチーフ。尾道の小さな窯から生まれる陶器のアクセサリーは、どれも繊細で美しいものばかりです。肌馴染みがよく、温かい雰囲気を醸すブローチやネックレスは、毎日の装いにさりげなく取り入れたいもの。今回は、個性的かつクラシカルな雰囲気漂う陶器アクセサリーを展開し、ファンを獲得し続ける陶器店「watarite(ワタリテ)」を訪問。同店のオーナー岡田洋子さんに尾道移住の経緯から、プロダクトにかける思いを伺いました。
それぞれのライフスタイルに寄り添う美しく表情豊かな陶器店
尾道商店街を構成する5つの通りの1本目「芙美子通り」の一画に、ホワッと優しい雰囲気を醸し佇むのが陶器店「watarite」です。アクセサリーやインテリア小物など、陶を使ったアイテムを主軸とし、2019年にオープンしました。
営業日は、金~日曜の週3日間。尾道をふらり訪れる観光客はもちろん、ここにしかない陶器プロダクトに魅了され、県外からリピート訪問する人も多いとか。
コンパクトな店内には、大ぶりのブローチ、耳元を飾る小さなピアスやイヤリングなどのアクセサリー、おうち時間をゆるやかに演出してくれるインテリア雑貨や小物までが、ずらりと並んでいます。その全てが、一点一点、制作工程に長い時間と手間が掛けられてつくられたものです。
表現の場所として移住した尾道という街
これら全てを手掛けるのが、尾道へIターンした陶器作家の岡田陽子さんです。山口県出身の岡田さんは、岡山県の大学にて、デザイン学部における焼き物を専攻。卒業後は、長崎県の窯元に3年間勤め、プロダクトデザインや生産管理まで、陶芸に関するノウハウを身に付けたといいます。その後、独立するために退職し、腰を据える場所を探して長崎から旅するように北上。たまたま辿り着いた尾道で宿泊したゲストハウスで、移住者コミュニティの誕生日会が開催されていたそうです。
「皆が移住者という集まりに驚きました。また、ゲストハウスのオーナーさんに自分の夢について相談したところ『ここでいいじゃん。ここ以外どこいくの?』って妙に説得されたんです。不安はありましたが、ものづくりを生業とする移住者が多い尾道では、もし何かあっても誰かが助けてくれる雰囲気に満ちていました」
そうして岡田さんは、アトリエと店舗を兼ねる物件を探し始めます。尾道商店街の入口から1軒1軒下調べをして3日後、理想の空き店舗を現在の場所に発見。2018年の尾道初訪から、運命的な出会いを重ね、異例の早さで店を立ち上げることになります。
店名の「watarite(ワタリテ)」には、ホームを構えず仕事の腕だけで全国をまわる「ワタリ職人」、そして長い距離を移動する習性を持つ「渡り鳥」の意味が込められています。
鳥と手をかけあわせた青いモチーフがブランドのロゴです。心赴くままに、どこまでも果てしないまだ見ぬ世界へ飛び立つ「渡り鳥」。
山口、岡山、長崎、そして尾道へ。軽やかに、飛ぶように、日々を大切に、一歩ずつ前を向いて歩んできた岡田さんの道のりは、作品の魅力となり、いま多くの人々を魅了しています。
身近な花や植物の繊細さを陶器アクセサリーにうつして
「watarite」のアクセサリープロダクトは主に2つの軸で構成されています。
まずは、鮮やかな色使いが特徴の「カプリース」シリーズ。フランス語で「奇想」という意味を持つこちらは、岡田さんがスケッチしたあらゆる自然物を掛け合わせてデザインされています。
花や植物の自然に見られる形状や構造、ゆるやかな曲線デザインなど、アール・ヌーヴォーを想起させるロマンティックなアイテムです。
もうひとつは、エストニア語で1を意味する「ユクス」シリーズ。岡田さんがバルト三国に1ヵ月ほど滞在した際にスケッチしたデザインが、小さなアクセサリーひとつひとつに反映されています。ブルーと白とシルバーを基調にした、グレートーンのアクセサリーは、上品で柔らか。創作時に新しい原画を描き起こし、1枚の粘土板から切り出していくため、ひとつとして同じものはありません。
心を託し手づくりで生み出される陶器アイテム
岡田さんの活動拠点である建屋2階のアトリエには、創作に用いるあらゆるツールが並んでいます。
デザインはもちろん、型もオリジナル。土の状態から成形し、乾燥させ、絵柄を掘り、色付け。素焼きと本焼きを経て釉薬をかけ装飾を施し、最後に焼き付けるまでの全工程がこの空間で行われています。どれだけ急いでも、1つの作品に約1週間もの時間がかかるのだとか。
「土を原料に作られる陶器ですが、その土は何年も堆積されてきた自然界のものです。採れる量に限りがあります。その限りあるものを無駄なく、土の良い部分を引き出して素敵に見えるよう心がけています」
岡田さんがつくる陶器からはどれも土の暖かみが感じられ、柔らかい印象を受けます。土と向き合い、岡田さんの技と心を託した陶器アクセサリーには、儚い美しさが宿っています。
また、アクセサリーの他に、時計や置物など陶器のインテリアを創作する岡田さん。作品全般に、北欧の陶器作家の影響が強くあるといいます。
「北欧の陶器は、つくりがとても自由なんです。自分の中で、焼き物という概念が崩れるほど衝撃を受けました」
伝統的な日本の焼き物の技法を主軸に、形式にとらわれないアイデアを投影した「watarite」の作品たち。北欧ならぬ瀬戸内の四季折々の豊かさが溶け込み、日々の装いもおうち空間もキラキラと明るくなっていくようです。
デイリー使いしたい優しい風合いの身に纏う陶器
「SETOUCHI+」がセレクトしたのは、ブローチやネックレス、イヤリングなど、毎日の装いにさりげなく取り入れたい、陶器のアクセサリーです。
まずは、大人気のブローチから5種。「ユクス」シリーズから1点、「カプリース」シリーズから4点がストア内にお目見えします。
プラチナの彩りがクールな印象をもたらす「ユく」のリース(写真・左上)。そして、存在感が光る「カプリース」のルビー(中上)、イエロー(右上)、メルヘンブルー(左下)、ベリー(右下)。
「カプリース」の鮮やかなカラーは、陶器ベースに七宝ガラスの粉末を重ねて。ゴールドに光る部分は、本焼き後に金彩をのせて焼き付けています。
色、形、デザインもさまざま。大きめのサイズなので、シンプルな装いに凛としたアクセントを添えてくれるブローチです。キレイ色のシンプルなニットの中央に付ければ、まるでジュエリーのような華やかな雰囲気に。日常使いのバッグに合わせたり、真冬はストールのワンポイントにオンすれば、いつものコーデが刷新。デニムなどのカジュアルなスタイルにも、スカートやワンピースといった上品なスタイルにも、幅広いコーディネートに合わせて楽しめます。
同じく「カプリース」」シリーズから、ネックレスも登場です。左から、ルビー、エメラルド、ローズ、マリンの4種展開。焼き物が持つ特長や魅力を余すことなく引き出し、アクセサリーという新たなカテゴリーで表現した、身に纏う陶器です。
最後は、蝶々モチーフのイヤリング。岡田さんが店舗を構える前からつくっていたという定番人気のロングセラー商品です。ぷっくりとした形がキュートな印象を演出。優しい風合いが耳元を飾ってくれます。カラーは、ピンク、ブルー、イエローの3色を用意しました。
デイリー使いはもちろん、パーティーシーンやプレゼントにもおすすめしたい「watarite(ワタリテ)」のアクセサリー。お気に入りを見つけて、ジュエリーボックスにそっと忍ばせれば、蓋を開けるたびに胸がときめく毎日がそこに。そして、丁寧な手仕事と陶器ならではの温もりは、きっと長く愛せる、自分だけの特別なアクセサリーになってくれるはずです。
TEXT&PHOTO/大須賀あい 写真提供/watarite
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「宝物を見つけた!」と感じた程の愛らしさと美しさを放つ「watarite」のアクセサリー。
ルビーやエメラルドの宝石のような色味の七宝焼の美しい発色は、華やかに自分の胸元を飾ってくれると確信しました。思ったとおり、シンプルな白いTシャツにもぴったりとマッチ!
植物や北欧デザインにインスパイアされ、尾道という土地で創作された「watarite」の作品は、皆さんの日常に華やぎと元気とそして、きっと「それ、可愛いね!」という会話の始まりを届けてくれると思います。
SETOUCHI+バイヤー 村上直美