歴史が色濃く残る一方で、新しいカフェや雑貨店も多く、街歩きが楽しいことでも有名な尾道。しかし、目抜き通りである商店街から一歩小路(しょうじ)に入ると、狭い路地ならではの風情が漂っています。秘密めいた空間に飛んでいくような、浮御堂小路に入ってみましょう。
とある老舗中華そば店の横を曲がると、浮御堂小路と呼ばれる路地に入ります。
その歴史は古く平安初期。海沿いに水観音が現れたことから、小さなお堂が建てられたそうです。そのお堂が海の中に浮いたように見えたことが、その名の由来だとか。
尾道に残る、一番古い小路とも言われています。中華そばの、おいしそうな匂いが小路まで広がっています。1日では食べきれない「おいしい」がたくさんあるのも、尾道の魅力。
だからきっと、何度も通いたくなるのです。
上を見上げると軒を連ねる家々の屋根。差し込む太陽の位置によって、光の表情が幾度となく変わり、カメラを持って訪ねるのもいいでしょう。
浮御堂小路に鎮座する、正一位鎌倉稲荷大明神。旅路で出会う祠は、それが何かわからずとも手を合わせたくなります。きっと地域の人たちが大事にしてきた小さな祠。
まるで、そこだけ時間が止まってしまっているような、秘密めいた浮御堂小路。
ここを南に抜けると、海岸通りが広がります。細い道から開ける、青い空と穏やかな尾道水道。夏は特に日差しが強く、思わず目を細めてしまうほど。
藤井製帽の麦わらハットをかぶって、気持ちいい風が頬をなでる海岸通りをお散歩しましょうか。
TEXT&PHOTO/大須賀あい 写真提供/尾道商會 奥 忠直