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自分らしいお気に入りの暮らし
オフグリッド生活のアイデア

自分らしいお気に入りの暮らし<br>オフグリッド生活のアイデア

 「オフグリッド」という言葉が注目されています。

電気、ガス、水道など生活に必要なライフラインを公共公益設備に依存せず、独立した方法で作られた建物やそのライフスタイルを指します。

特に環境に配慮した生活スタイルとして世界的に注目されるオフグリッド生活とはどんな暮らしなのでしょう。

 今回、尾道からほど近い里山でオフグリッド生活を始められた藤山ご夫妻にお願いして、オフグリッド生活を支えるライフラインの代替えアイデアを教えていただきました。それは単にライフラインから独立することではなく、「自由」と「不自由」を同時に手にして得る「自分らしいお気に入りの暮らし」でした。

 自由で愉快で安心な藤山家のオフグリッド生活を一緒に拝見しましょう。

 

 

 

 

 目の前に広々とした田園風景が広がる藤山さんのオフグリッドハウス。以前は病院として使われていた建物をリノベーション。敷地内には母屋、ご主人の仕事場、井戸、畑があり、周りを防風林で囲まれているので、聞こえる音は風に揺れる枝葉の音だけ。静かな空間です。ここに藤山さんご夫妻とお母さまの3人で暮らしておられます。

 

【 ライフラインの代替えアイデア 】

 藤山ご夫妻はご主人が音楽家「トウヤマタケオ」、奥様は「イチリヅカシューズ」のデザイナー兼職人です。

 10月の初旬に伺い、水道、電気、ガス、下水道、ゴミの順に教えていただきました。

 

【 水道/井戸 】

 

 

 敷地内には直径2m近くある大きな井戸があります。

土ではなく大きな岩をくり抜いて作られています。岩から潤沢に質の良い真水が染み出し、常に十分な水量を蓄えています。

「生活に欠かせない水が備わっていたのはラッキー。病院だったからか水量も豊富で井戸の作りもしっかりしている。この井戸と水があったから、ここなら思い描いた生活ができるかも、やっちゃえって始めました。この水が後押ししてくれた。井戸水は炊事、洗濯、お風呂に使っています。飲み水にはまだ使えていないけどそのうち使いたいと考えています」。

水がない場合、井戸を掘るにはかなりの金額がかかります。雨水を貯水、ろ過して使用する場合もありますが安定供給の点でまだ課題が残ります。

 

【 電気/ソーラーパネルとバッテリー 】

「電力はソーラーパネル6枚でまかなっています。」

 

 

ご主人の仕事部屋。

平屋作りの屋根の上にソーラーパネルが設置されています。

 

 

 

 火災や電磁波予防のため母屋横の小さな小屋に蓄電量3.6kwのバッテリーが3台。

1台が照明用、1台がコンセント用で1台は予備です。総務省統計局調査による3人暮らし電気代平均額9,183(2021)の家庭とは違い、電力消費の少ない藤山家の普段の生活なら雨でも4日は持ちます。充電も晴れた日は午前中で満タンになります。

「常に通電しているのは冷蔵庫ぐらい。今は大型冷蔵庫ほど省エネに作られています。照明も全てLEDなので消費量は本当に少ない。テレビはなくパソコンや洗濯機、精米機などを都度で使用する程度。クーラー、ドライヤー、電子レンジも炊飯器も使いません。今のところ不便を感じることはないですね」。

 

 

 

お風呂場の屋根に設置された太陽光温水器。

 魔法瓶型のタンクの中に井戸水を通し温める仕組み。

「夏は熱湯になるので何人シャワーしても大丈夫。日照不足や冬の時期は薪を焚く必要がありますが、ぬるいお湯を40℃にするだけなのであまり手間はかかりません」。

 

【 ガス/薪 】

 

 

 

 

 調理は薪を使うキッチンストーブです。天面では鍋物、炒め物ができ、オーブンでは焼き物ができる構造です。ストーブでもあるので、これから寒くなる季節に使うのが楽しみとの事。LPガスのコンロも用意されていて急ぐ煮炊きの際などで併用されています。

 

 

 

 

 

薪式ロケットストーブ

 本格的な冬が来たら活躍する薪ストーブ。煙道を隣部屋のベッドの下を通して外へ排煙する仕組みです。隣部屋は高齢のお母さまの部屋です。寒い冬の夜にきっと寝床をぽかぽかに温めてくれることでしょう。

 

 

 

 

 ストーブのある1階の部屋に天井はなく、2階の部屋へあたたかい空気が流れるレイアウトです。

「冬暖かく、夏涼しくする一番のポイントは2階に天井を設置して、断熱材をきちんと入れること。冷暖房効果が全然違う。リフォーム3回目でやっと実現できた」。

過去のリフォームの際は屋根まで吹き抜けにしていて、冬の寒さ、夏の熱さにご苦労されたそうです。

 

 

 

 建物の土壁の両側に羊毛の断熱材を追加して壁の厚みは倍に。

化石燃料由来ではなく天然素材での暖房対策。外気より5℃くらい室内は暖かいそうです。

 

 

 

 

 窓を多くつけることで室内に冬は光を、夏は風をとり込み、エアコンのない生活を実現しています。

「窓ガラスはペアガラスにしてあるけど金属製のサッシではなく木製の枠なのである程度のすき間風が入ります」。

 

【 下水道/コンポストトイレで土に返す 】

 

 

 

手作りのコンポストトイレ(バイオトイレ)

 一斗缶に米ぬか、もみ殻燻炭、珈琲かすをブレンドした土が入っています。

すぐに微生物が分解するので1日平均二人使用しても量が増えない。気になる臭いも土と燻炭でとても少なくなったそうです。臭いが気になる時はホワイトセージを焚いて消臭。土は定期的に交換します。庭に生ごみコンポストがあり野菜くずと一緒に堆肥となり畑にまかれます。

 小は水で薄めながら屋外のタンクに一旦貯めます。それを林や畑に撒くとイノシシ除けにもなるし、土の肥料にもなります。

 下水はお風呂から始まって、洗面台、キッチンから排水されたものが下の畑に自然排水されていきます。石鹸、洗剤も自然に戻るものを使用しています。

 

 

 

 

 雨どいのない屋根。といがないと屋根から落ちた雨粒のハネが家の壁に当たり家が痛み、水捌けも悪くなります。そこで雨が落ちる場所に水脈を掘り、コルゲート管という穴あきのパイプを通して、水を流しています。廃材の瓦を土に埋め、落ちる雨のハネを抑える工夫を施しています。

 

【 ゴミ/ゼロウェイスト 】

 

 

 

 「ゼロウェイスト」とは、「ごみをゼロにする」ことを目標に、できるだけ廃棄物を減らそうという考え方で今、世界中に広まっています。

 「スーパーのプラスチックトレイや牛乳パックの回収だけでは、ゼロウエイストにならない。そもそも、暮らしにゴミを持ち込まない工夫が必要」。とおっしゃる藤山さん。

具体的な行動として、

〇みそ、梅干しは手作り。

〇油、醤油、みりん、ナッツ、スパイス類などは量り売りで持参したレフィル容器(タッパーやガラス瓶など)に詰めてくれる専門店で購入します。

〇野菜などはプラスチック包装無しで販売している生産者から直接購入。

〇水筒やテイクアウトコーヒー用のマイタンブラーを持ち歩く。

などを実践しておられます。

「尾道市街から田舎に越して発生した悩みが包装ゴミ。買い物がスーパーマーケットになってしまうので。今一番何とかしたい課題です」。

藤山さんの話を聞いて「1日何袋開けていたんだろ」と振り返ると、平気で35袋開けている事に気付きます。しかも毎日!

 

 

 

【お気に入りの暮らし】

 藤山ご夫妻のオフグリッド生活の目的は、大きな環境負荷を抱えるライフラインや災害など緊急時の対応から解放され、環境に配慮した自由で安心したお気に入りの暮らしを手に入れること。ご夫妻もまだまだ手探りで実験中ですが愉快にお気に入りの暮らしを楽しんでおられます。

 世界中が協力して地球環境に配慮した生活を目指す大きな流れがあります。5年後、10年後の未来の暮らしが今よりさらに環境に配慮したものに変わるのは間違いありません。オフグリッド生活はその答えではなく選択肢の一つです。

 

 藤山家の黒猫が天井の骨組みをお気に入りの場所に選んだように、私たちも楽しくて自分らしいお気に入りの生活を選びたいものですね。

 

 今回、プライベートな情報を惜しげもなく提供いただいた藤山ご夫妻には深く感謝いたします。

SETOUCHI+バイヤー  松枝 修平

 

 

 

 

藤山さんの奥様のブランド「イチリヅカシューズ」。

「自分らしいお気に入りの暮らし」によりそうレザースリッパです。

>商品ページはこちら

https://setouchi-plus.jp/products/brichirizukashoes

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