尾道の街中では、用水路に金魚が泳いでいる。まことしやかに囁かれる噂は、嘘か誠か夢か現か。金魚が泳ぐゆかしき光景は、水尾町通りにありました。
「SILVER」で帆布バッグのカスタムオーダーをお願いした帰り道、少しフラッと寄り道さんぽ。商店街付近をぶらり散策。
ここは水尾町通り。尾道市役所付近から商店街に向けて南北にのびる道です。
その昔、井戸から流れ出た水が尾のように見えたことから、この名前が付けられらたそうです。尾道には、海から山にかけて、小さな通り(小路)がたくさん点在しています。そのすべてに、歴史を紐解く名が付けられているのです。
毎年夏になると、水尾町通り近辺では「水祭り」が開催され、多くの人で賑わいます。江戸時代からの歴史を持つ、尾道の夏の風物詩です。夏祭り、浴衣、ヨーヨー釣り、金魚すくい、りんご飴…。日本の短い夏を思うと、少しばかり切なさがこみあげてきます。
そんなことを考えながら通りを歩いていると、幅20センチほどの水路に、サッと何かが動く影が。
金魚?? それも、1匹だけでなく何匹も。水槽で泳ぐ金魚でなく、水路に泳ぐ金魚です。
水は綺麗に透き通っています。井戸が多い、尾道ならではが成し得る光景かもしれません。
こちらの金魚、ご近所の方が飼われているとか、いないとか。
飼うという表現よりも、自然と愛されているといったほうが正しいかもしれません。
少し成長した金魚の様子から、長く大切にされていることがわかります。
水の中を涼しそうに泳ぎ回る金魚の姿は、旅の疲れをふと忘れさせてくれるものです。
ひとつずつ辿るように歩けば、観光名所とはまた違う尾道の日常風景が待っています。
TEXT&PHOTO/大須賀あい