尾道といえば、お寺、映画、サイクリング、坂…。いくつかのイメージが頭に浮かぶことと思います。そして、猫も重要なキーワード。街を歩けば、いたるところで猫のいる光景が目に飛び込んでくることでしょう。観光名所として有名なのは、福石猫や招き猫美術館が待つ「猫の細道」です。しかしご存じでしょうか。「猫の小道」と呼ばれる、もう1本の猫の道が存在することを。
尾道水道から山側に上る多数の坂道。登りやすいよう整備された坂道以外にも、生活道として使われている細い坂道が網目のように続いています。尾道散策の休憩所兼、猫さん集中地として知られる「西土堂ポケットパーク」から山手へ進むと、かなり急勾配の細い道が出現します。
どこまで続くのかと途方に暮れそうになりますが、尾道は路地が多いわりに、突き当たりが少ないことで有名だとか。看板や目印がなくとも、歩いていれば必ず「どこか」にたどり着きます。その「どこか」が分からないのも、きっと尾道旅の醍醐味です。
息を切らしながら歩くこと数分。突然に現る案内標識にちょっと安心。ここを進めば、尾道美術館や千光寺の展望台へと続きます。道は必ずどこかに繋がっている。どこかで聞いたヒット曲の歌詞を思い出しながら、ふと足元を見ると…。
コンクリートに残る、かわいい肉球の跡が…!
一カ所だけではなく、いくつもの階段に足跡、足跡、足跡。セメントが乾く前に、猫が歩いてしまった形跡がそこかしこに!
悪気なくやっちゃった感満載で、クスッと笑える猫の小道。
目的地を目指すことに集中してしまうと、どうしても前だけを向きがちです。でもちょっと足を止めて、下を向いてみてください。思いがけず、微笑ましい光景に出会える。
旅の極意は、きっとそこにあります。
TEXT&PHOTO/大須賀あい