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身体に寄り添う優しい味
世界が認めたマーマレード

身体に寄り添う優しい味<br>世界が認めたマーマレード

ガラス瓶の蓋をあけると、新鮮な果実の香り。目を閉じて数秒間幸福感に浸り、果肉が残るジャムをたっぷり食パンにのせれば、それだけで華やかな朝食が完成。「季節のジャムと日々のおやつ『cosakuü(コサクウ)』」のジャムには、おいしい暮らしのヒントがたくさん詰まっています。国際的な大会で賞も受賞した、瀬戸内生まれのジャムの魅力に迫ります。

 

 

 

お店を持たない、噂のジャム工房

尾道市の対岸、向島。島内の工房で、ジャムと日々向き合う「cosakuü(コサクウ)」代表の上杉裕加さん。瀬戸内に実る旬の柑橘や野菜を使い、安心で安全な無添加のジャムをつくっています。

 

 

上杉さんの食の原点となるのは、家族。祖父の代から続く飲食店をご両親が経営し、お家での遊びはクッキー作りというナチュラルな環境がいつも側にあったとか。自宅で始めたジャムづくりも、日常からの延長によるもの。大学の生活学科を卒業した後、カフェやホテルのレストランなどに務め、一度は事務職にも就きますが、やはり目が向いたのは、小さな頃から舌を鍛えらえた食の世界だったそうです。

 

 

ジャムづくりに本腰を入れるきっかけとなったのは、結婚後のこと。ご主人の先代が持つ畑で大量に収穫される柑橘類は、販路が少なく余ってしまうこともしばしば。義父から相談を受けジャムをつくり販売してみたところ、徐々に評判になっていきます。ジャムづくりの場は、自宅工房から向島の人気カフェ「立花食堂」に併設されるショップに。そして20219月、現在の場所へ移転。お店を持たない評判のジャム工房からは、ジャムの甘い香りが漂っていました。

 

 

繊細な手仕事から生まれる表彰マーマレード

「コサクウ」のジャムは、ただおいしいだけではありません。マーマレードの本場イギリスで開催される格式あるコンテスト「The World’s Original Marmalade Awards」にて、2017年から2021年連続で、出品ジャムが賞を獲得。2005年より始まった英国湖水地方、ダルメインで開催されるこの大会は、世界約30カ国から3000本以上の応募がある、非常に格式高いコンテストなのです。

 

 

SETOUCHI+」に登場するのは、世界で評価されたマーマレードです。コトコトじっくり。1つの銅鍋から作れるジャムは、約2030瓶。「丁寧に」という言葉のとおり、一つ一つの工程に時間と手間と愛情を注いでいます。

 

 

まずは、「八朔.レモン.カルダモンJAM」。2019年、2020年、そして2021年の同大会で銅賞を連続受賞しています。八朔とレモンそれぞれの皮を剥き、果肉の粒を取り、種を取り、果実を絞り、皮を包丁で刻みます。柑橘が出回る冬の時期には、上杉さんの手に包丁ダコができるほど。鼻をスッととおる爽やかなカルダモンをアクセントに加えたマーマレードは、パンやヨーグルトだけでなく、肉や魚との相性もばっちり。普段の食事をワンランクアップし、グッとテイストを変えてくれる魔法の調味料になります。まるで柑橘類をまるごと食べているかのような、皮と果実のハーモニーに感動さえ覚えます。

 

 

2018年と2020年に金賞を受賞した「金柑&カカオニブJAM」は、マーマレードの甘さと酸味にコリコリ食感のカカオニブが加わっています。チョコレートの原料であるカカオニブは、「コサクウ」と同じ向島内にあるチョコレート工場「USHIO CHOCOLATL」から仕入れたもの。カオニブ独特の食感やほろ苦い旨みを、ジャムと共に感じられる味わいです。たっぷりバターをのせたトーストとの相性が最高だとか!

 

 

瀬戸内素材と生産者の想いを一瓶に

ブランド名の「cosakuü(コサクウ)」は、備後弁で「作る」を意味する「こさえる」と「食べる」という意味の「くう」から名付けられた、上杉さん考案の造語です。ジャムを「こさえる」には、身体に優しいフレッシュな素材が大前提。甘さをプラスするのは、きび砂糖。急激な血糖値の上昇を抑えると言われ、食べる人の健康にも配慮しています。

柑橘類は、しまなみ界隈の顔が見える農家さんから。もちろん皮まで余すことなく使うため、農薬不使用のものを使用しています。栽培方法も把握し、自ら収穫に携わることもあるのだとか。上杉さんの口から度々出るのは、作り手へのリスペクトの言葉です。

 

「ジャムは素材ありきです。柑橘農家さんが、1年かけて大切に育ててくれた果物を、ジャムにさせてもらっています。農家さんあってのマーマレードです」

 

 

素材選び、旬のものを一番美味しい時にジャムにすること、果物扱いの丁寧さ、そして上杉さんの信念。その全てが、一瓶にぎっしりと詰め込まれている「コサクウ」のジャム。改めて上杉さんに、ジャムの魅力を聞いてみました。

 

「ジャムはパンに塗るだけでなく、料理やお菓子に添えるなど多様性があります。冷蔵庫にあれば、きっと頼れる存在です。瀬戸内海は、山もあり海もあり食べ物の宝庫。吟味した瀬戸内の食材を使っているので間違いない商品を作っていると思います。何より、私がジャムづくりを楽しんでいるんです。ジャムの世界は、本当に楽しい」

 

 

 

まるで宝石のようにキラキラと輝き、舌の上で香りと柑橘の食感がはじけるジャム。心と身体をニュートラルな状態にして、口にしたそれぞれの人が持つ本来の美しさや、最大限の五感を引き出してくれるように思います。今後、「SETOUCHI+」でのみ展開するジャムレシピを考え中だとか。

脳内がおいしいで満たされるようなジャムを、いつも食卓に。気負わず、ラフに、自然体で。

 

購入はこちら↓

https://setouchi-plus.jp/collections/cosakuu

 

TEXTPHOTO/大須賀あい  写真提供/cosakuü(コサクウ)

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