どんなコーデにもぴったりハマる帆布のバッグは、オールシーズン使えるマストアイテム。厚手で丈夫として知られ、長く使える生地だからこそ、デイリーに気持ちよく、そして遠慮なく使えるものがいい。尾道に工房兼ショップを構える「SILVER」の帆布の色は白(生成り)のみなのに、シンプルという一言で片づけられない力強さがあります。生活という自分の色をのせられる、帆布製バッグが持つクリエイティブな世界を覗いてみましょう。
時も世代も超えていく普遍的なものづくり
尾道を代表する観光名所、千光寺へ上るロープウェイ乗り場から徒歩すぐ。帆布制バッグやウェアを展開する「SILVER」の扉を開けると、棚に並ぶ数々の白いプロダクトが目に飛び込んできます。色は全て同じですが、一つ一つ形も手触りも違います。これら全て手がけるのが、友枝正典さんです。
尾道の西側隣街、三原市出身の友枝さん。大学卒業後、土木建築系の会社に就職しますが、もともと好きだった古着やジーンズへの憧れから、デニムの一大産地である岡山県児島市のジーンズメーカーへ転職。生産現場、営業、接客などあらゆる部門を経験し、5年のときを過ごします。しかし、友枝さんの興味は「つくること」にありました。その後、岐阜のレザー工場に2年間、そして福山市のデニム工場に5年間、作り手として徹する期間を経て、2018年に「SILVER」を立ち上げます。
「デニムに合わせやすいものを作ろうと思ったとき浮かんだのが、帆布のバッグでした」
頑丈で、デイリーユースでガシガシ使っても破れにくく、重い荷物の持ち運びにも活躍してくれる帆布のバッグ。友枝さんが愛するデニムやレザーに通じるものがあります。その共通点はきっと、時を超えても人々を魅了する圧倒的な普遍性です。
ルーツは工具入れ、自分色に染める生活用品
ブランドコンセプトは、「LIFE IS A CANVAS」。CANVASの意味は2つあります。
一つは素材としてのキャンバス、そしてもう一つは絵を描くキャンバス。人生という白いキャンバスに色を付けるのは、その人自身。バッグも同じ、経年の変化も汚れも、自分の暮らしがベースとなり価値が出る。世代も性別も、時代さえ問わない懐の深さ、自分で完成させる余白を残した白(生成り)が「SILVER」の魅力の1つです。
また、「色よりも、形を増やしてお客さんに喜んでもらいたいと思った」と話す友枝さん。約50種類あるというバッグのデザインは、友枝さんが集めたヴィンテージのバッグからインスピレーションを受けているそう。工房内には、日本製の登山リュック、アメリカから仕入れたミリタリーバッグなど数々の希少なバッグが並んでいます。
工具入れ(ツールバッグ)も、「SILVER」製品に欠かせない要素。帆布の色だと一見わかりませんが、ポケットの数や場所、頑丈な縫い付けなどの機能性は、工具入れがベースになっています。ブランド名も、工具が持つ銀色に由来。店舗前の道路が、石見銀山街道、通称「銀の道」と名付けられているのも、ネーミングソースの1つだとか。遡ること江戸時代、島根県の石見銀山で産出された銀を陸路で港へ運ぶために利用されていた道。港町尾道のロマンをも感じさせてくれます。
瀬戸内カラーの別注アイテムに注目を
「SETOUCHI+」に登場するのは、バッグ2種類とエプロンです。
バッグは、オープン当時から一番人気を誇るNEIGHBORシリーズから「NEIGHBOR W」。お隣さんという意味を持つこちらのバッグは、ちょっとしたお出かけに便利な使い心地やサイズ感が特徴的。
素材は、軽くて丈夫な6号帆布。コンパクトに見えて、物がしっかり入るのも魅力的です。A4サイズがすっぽりおさまり、ペットボトルを入れても大丈夫。型崩れを防ぐため、バッグの底には木製の板がセットされ、上部には帆布生地の端を用い、糸飛びの心配もありません。持ち手は、デニム補強用に使うカン止めミシンで縫うなど、丁寧に製作されています。
そして特別にペイントカスタムされた、「NEIGHBOR W SETOUCHI」。塗料を絶妙な調節加減で散らした、「SETOUCHI+」だけの別注アイテムです。海と空の水色、雲の白、柑橘の黄をイメージした3色で構成。また黄色と白の「LEMON」、水色と白の「SEA SKY」の2色でペイントしたアイテムも特注でお目見えします。
どれも、ハンドペイントならではの一点一点異なる味わいのある仕上がりが魅力です。
写真は、ショップでオーダーできるペイントカスタムバッグ。自分だけの色、自分だけの柄。同じものは他にひとつとしてありません。
「ワークエプロン SMOKE LIGHT」には、肉厚感のある10号帆布が使われています。たくさん装備されたポケットは、何を入れるか迷ってしまうほど!工具がベースとなる「SILVER」ならではのエプロンは、料理はもちろん、ガーデニングや軽作業に。
自分で育て、長く愛して楽しむ経年劣化
「ダダダダダッ」。工房には今日も、同じ早さで刻む軽快なミシンの音が響いています。
型紙から起こし、裁断、アイロンがけ、縫製、仕上げまでを全て1人で手掛ける友枝さん。帆布の魅力についてこう語ります。
「帆布は、船の帆、トラックの帆など、資材としても使われてきた素材なので、とにかく丈夫です。天然素材で温かみもあり、使い続けていくうちの味が出ます。僕が惹かれるのは、変化していくもの。できるだけシンプルに、余白を残したものづくりを心掛けています。皆さんが持つそれぞれのスタイルで、愛着を持って長く使ってもらえたら」
余白というのは、作り手や人間の五感を通ってきたものに、現れやすいでしょう。シンプルだからこそデザインやコンセプトが際立ち、一つ一つの工程を妥協せず、帆布の特徴を最大限に生かすことを意識する「SILVER」のプロダクト。
一緒に過ごした時間、見てきたもの、聴いた音、全部の記憶が染み込んでいく、私だけの帆布製品と、これから一緒に物語を紡いでいけば、素敵なエンディングがきっと待っているはずです。
購入はこちら↓
https://setouchi-plus.jp/collections/silver
TEXT&PHOTO/大須賀あい