アロマは、快適な毎日を送りたい私たちの力強い味方です。とりわけ柑橘系の香りは、気持ちの切り替えやリフレッシュに欠かせないもの。愛媛県大三島の「島香房」でつくられるエッセンシャルオイルは、どれも島内の材料を使い、丁寧に抽出されたものばかり。その希少な国産オイルを使ったオーガニック石鹸やバスソルトで、潤いに満ちた日々を楽しめますように。
大三島を香りで届ける柑橘精油の発信地
しまなみ海道のほぼ中間地に位置する大三島。多くの国宝を有する大山祇神社を筆頭に、豊かな自然と美しい景色に彩られ、「神の島」と呼ばれています。その島の一画に佇むのが、エッセンシャルオイルを主軸に、さまざまなナチュラルコスメを製造販売する「島香房(しまこうぼう)です。
ミニマムな店内で目を惹くのは、いよかん、グリーンレモン、八朔、ネーブルなど、全9種類の柑橘エッセンシャルオイルです。これらは全て、大三島で採れた柑橘から抽出されたもの。現在では、まだ日本生まれの精油は少なく、採れる量も少ないため、全国のアロマセラピストや、アロマテラピー愛好家から注目を浴びています。
その希少な和精油をつくる段階で生まれるフローラルウォーターや、エッセンシャルオイルをたっぷり配合したコスメもこちらの人気商品。石鹸や保湿バームが並ぶ空間は、思わず何度も深呼吸してしまうほどの良い香りで溢れています。
ネロリの香りに魅せられて精油づくりをスタート
そんな瀬戸内の小さな島から柑橘の香りを全国へと届けているのは、松田康宏と松田英理子さんです。
大学、大学院ともに農学部に進み、卒業後は農村地区の地域活性コンサルティング会社に勤めた康宏さん。実家が営む機械工具の卸売業にも携わり、「いつかは地方で農業を」という思いが強かったといいます。英理子さんは、理学部生物学を専攻。大学、そして大学院へと進んだ後、製薬会社へ就職。研究開発部門で新薬の研究などに携わっていたそうです。同じく夢は「地方や島でのスローな暮らし」だったといいます。
そうして2人は2012年に、地域おこし協力隊として関東から大三島に移住。翌年に「島香房」を立ち上げ、島の柑橘に特化した製品づくりを進めていきます。
2人が香りに注目したきっかけは、みかんの花の香り「ネロリ」です。
「5月になると、大三島は柑橘の花があちこちに咲き始め、島全体が甘い香りに包まれます。この香りを商品にしたら、どれだけ素敵だろうと思ったんです」
蒸留器を取り寄せ、試行錯誤しながら独学で精油づくりをスタート。熱や圧力、水分などによって芳香成分が損なわれない「水蒸気蒸留法」を用い、柑橘に最適な温度や時間を何度も検証し、柑橘本来の香りを楽しめる精油を完成させます。
もちろんこだわりは、蒸留方法だけではありません。精油の原料となる柑橘は、島内に7カ所ある畑で、農薬や化学肥料に頼らずに栽培。こまめな草刈りや土づくりにも力を入れ、安心で安全な果実を自ら育てています。柑橘の皮むきは、近所の人の手を借りながら、ひとつひとつ手作業で。つまり、自社の畑で栽培した柑橘のみを蒸留し、抽出成分の質の高さを追求した100%ピュアな精油を生み出しています。
ふわふわ泡でごきげん肌を叶える精油配合のオーガニック石鹸
「SETOUCHI+」に新しく加わるのは、島の香りをダイレクトに感じる精油を使ったコスメです。
まずは、スキンケアソープ「しまなみサボン」。天然由来原料の成分を壊さない「コールドプロセス製法」を用い、天然成分100%で作られた無添加石鹸です。じっくりと約1ヵ月かけて熟成。保存料や防腐剤、石油由来成分などを加えていない、植物由来のお肌に優しいナチュラルソープです。
柑橘だけでなく、大三島の特産品を肌でも味わってもらいたいと、島由来の原料をふんだんに使用するのも「島香房」の石鹸ならでは。
ハニー&シトラス(写真右)は、大三島のみかん花から採れるはちみつをふんだんに。国産米ぬかオイル、オリーブオイル、シアバターやカカオバターなど、保湿成分が多く加わっています。洗い上がりはさっぱりとしつつも、肌はうるおったまま。肌本来の潤いを守りしっとり感をプラスしてくれるので、洗顔後はシンプルなケアでOK。しっとりなめらかな使い心地が魅力です。香りは、大三島産のオレンジ、いよかんをベースに、愛媛県産ヒノキやクスノキをブレンド。爽やかかつ、穏やかな香りでリラックスタイムを演出してくれます。
淡いピンク色がキュートな「ストロベリー」(写真左)は、島で収穫されたブランド苺「あまおとめ」の果汁を配合。汚れを吸着して落とすクレイミネラルズを加え、毛穴汚れをケアし、ふっくらと美しい肌へ導いてくれます。主原料のスイートアーモンドオイルに加え、国産米ぬかオイルや、ココナッツオイル、シアバターなど栄養成分もたっぷり。大三島の柑橘精油はもちろん、ローズゼラニウムが香る、甘くスイートな石鹸です。
毎日のフェイシャルソープとしても使うのはもちろん、たっぷりと泡立てて贅沢に全身に使っても。爽やかで上品な香りが、バスタイムを華やかに彩ります。
体を芯から温めてくれるバスソルトで大三島の香りを満喫
「島の香りバスソルト」も、リラックスタイムに欠かせない人気商品です。
ヒマラヤ岩塩に、天然のエッセンシャルオイルを加えたバスソルトは、「島ゆず&ひのき」、「島ネーブル&ラベンダー」、「島レモン&ローズマリー」の3種類。愛媛の林業家がつくるひのき精油とゆず精油が加わった「島ゆず&ひのき」は、どこか懐かしく馴染み深い香りが特徴です。緊張をほぐしてくれる効果があるといわれるラベンダーが配合された「島ネーブル&ラベンダー」は、穏やかで温かい気持ちへと導いてくれます。清々しい香りに包まれるのは「島レモン&ローズマリー」。筋肉疲労の緩和が期待されるローズマリーも、もちろん大三島産です。
ヒマラヤ岩塩が持つ温浴効果だけでなく、乾燥しがちな肌に潤いを与え、つややか&柔らかな肌に整える効果も持ち合わせたバスソルト。宝石のようなキレイな見た目に思わずうっとりとしてしまいます。湯船に浸かりながら何度も深呼吸したくなる香りは、男性女性問わず人気です。気分に合わせて好みの香りをチョイスして。
「香りは記憶と強く結びつきます。島の自然から得られる香りを、日常生活の中で感じてもらいたいんです。島を訪れた人には思い出として。これから来られる方には、香りを記憶としてとどめてもらい、いつか大三島に旅してもらいたいですね」と松田夫妻。
仕事のストレス、落ち着かない天候……日々、体にのしかかる負担は増える一方で自律神経をどう整えるかが、今の時代の大きな課題になっていることでしょう。だからこそ、頼りたいのが香りの力。いつもはあまりにも早く過ぎ去っていく月日を送っていても、時には「島香房」が生み出す天然の香りに身を委ねてみませんか。しまなみ海道の香りを記憶に留めて、目を閉じて深呼吸すれば、しばしの間、脳内しまなみトリップ。お気に入りの香りの中で心身ともに解放されれば、時間が経つのは思うよりも緩やかであることを、実感できるに違いありません。
TEXT&PHOTO 大須賀あい