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広島県尾道市
二夜連続読物「妖しい尾道」第一話
令和に光る大正モダン
キツネが化かす尾道の喫茶店
二夜連続読物「妖しい尾道」第一話<br>令和に光る大正モダン<br>キツネが化かす尾道の喫茶店

坂、映画、お寺、猫、サイクリング。尾道を表す言葉は数あれど、ふと入った曲がり角を迷うように進めば、定番の観光名所とはひと味違う、アングラな魅力を放つスポットが存在します。8月は、少しばかりの妖しさを感じる、ディープな尾道へご案内。まずは、とりわけ不思議な力が満ちている喫茶店として語られる「喫茶 キツネ雨」へ。化けて化かして化かされて。あなたに代わって、魅惑のキツネの世界へのドアを開きましょう。

 

今日もキツネに化かされて、大正ロマン香る魅惑の喫茶店

 JR尾道駅から東に向かって歩くこと約15分。商店街を抜けた先に現れるのが、昭和レトロな面影残る新開地区です。ここは、江戸期から歴史を刻み続けてきた全国屈指の歓楽街。今もなお、その街並みには当時の面影が色濃く残り、好奇心を駆り立てられる危うさと、懐かしさを感じるノスタルジーに魅了されます。

 

 

 

 

 その界隈を、何かに導かれるよう、ふらりふらりと歩いていると、ぼつんと佇む喫茶店が目の前に。

 

 

 

 

 営業中ならぬ化かし中の看板にドキリとしながら中に入ると、クラシカルで重厚感のある空間が広がっています。

 

 

 

 

 ここは「喫茶 キツネ雨」。

 その昔、閉店とともに長く眠っていた昭和の喫茶店を、建物の歴史に沿うように、古めかしさを残しつつ現代に再現。ステンドグラス、緑色のビロードの椅子、木製の衝立などはそのままに、イギリスアンティークの家具やシャンデリアなどを新たに配置。時間をかけてゆったりとティータイムを過ごしたくなる、和洋折衷のヴィンテージ感に溢れています。

 

 

 

 

 お店を営むのは、喫茶店とキツネ、そして大正ロマンを愛する西夫妻です。夫の隼平さんは、尾道市のお隣、福山市のご出身。高校卒業後に進学で関西へ。そこで出会った妻の亜紀さんとともに、尾道へ移住し自店を構えたのは2018年のこと。

 

 

 

 

 「2人とも、昔からレトロな喫茶店が好きだったんです。それに文明開化後の和と洋が融合した大正ロマンスタイルにも心惹かれていました。加えてキツネ。キツネは、怪しくもあり、神秘的でもあり、かわいくもある。とっても魅力ある動物です」

 

 

 

 

 そんな西夫妻を丸ごと映すように、店内のあらゆる場所に散りばめられているのは、キツネモチーフの雑貨やインテリアです。

また、店名の「キツネ雨」は、造語ではなく、日本古来の「天気雨」を指す表現。その由来は諸説ありますが、その1つに昔は「天気雨は怪奇現象」だと言われていたことが挙げられます。

 

 

 

 

 店内のBGMはクラシック。バッハの名曲が程よい音量で流れ、暗めの照明が、より謎に満ちた雰囲気を醸し出しています。

 

 

一瞬でハートを掴まれる、キツネスイーツと純喫茶グルメ

メニュー表には、喫茶店の定番が揃い、キツネからインスピレーションを受けたドリンクやスイーツもラインナップ。昔ながらのフォルムや彩り、キツネの可愛さから、クチコミやSNSで人気が広がったメニューを、いくつかご紹介しましょう。

 

 

 

 

 世羅町産たまごの卵黄をたっぷりと使った「昔なつかしプリン(ドリンク+500円。単品オーダー不可)」。ほろ苦いカラメルがたっぷりとかかった、ちょっぴり固めのプリンです。小さく絞り出されたホイップクリーム、そしてさくらんぼがアクセントとして添えられています。これぞ喫茶店でしか出合えない、クラシックな逸品です。

 

 

 

 

 喫茶店といえばクリームソーダ。寝る前に飲むクリームソーダをイメージした「おやすみクリームソーダ(600円)」の色は、澄み切ったブルー。

 

 

 

 

 しゅわしゅわと弾ける炭酸と優しい甘さのアイスクリームの上には、夜空をイメージした金平糖がトッピングされています。子ぎつねさんクッキー(100円)をプラスすれば、よりキュートに。

もちろん、王道グリーンのクリームソーダも、スタンバイされています。

 

 

 

 

 食べるのを躊躇してしまうチャーミングな「白狐チーズケーキ(600円)」。フランスのスイーツ「クレームダンジュ」から着想を得て、キツネに変身させたとか。耳はアーモンド、目はチョコレート、しっぽはマーマレードで再現。口当たりはフワフワ、一口食べるだけで夢心地気分に浸れるケーキです。

 

 

静かに心を溶かす、喫茶店ならではの優美な時間

本をめくる音、声を潜めたヒソヒソ話。

シュワっと喉を潤すクリームソーダと、甘い欲望を満たしてくれるプリン。

そして、たくさんのキツネたち。

 

 

 

 

 窓の内側は大正ですが、外に一歩出ると、そこは令和の尾道。

 まるで、どこでもドアを開けたかのような魔訶不思議な気分に包まれます。

 

「喫茶キツネ雨」で過ごす時間は、ここでしか味わえない特別なもの。甘美な余韻が、しばらくの間、心に染みわたります。

 

 

 

 

そんな情緒を引きずりながら、帰路へ。

「ありがとうございました。またいつでも、お越しください」

西夫妻の柔らかな声が聞こえてきます。

そうして小さくもう一言。

「わたし、もしかすると、本物のキツネかもしれませんよ」

 

その真相を確かめるのは、あなた自身。優美で美しいフロアで、静かに心溶けるちょっぴり妖しい喫茶体験を。

 

 

 

■店舗情報

・店名/喫茶 キツネ雨

・住所/広島県尾道市久保2-11-17

・営業時間/9:0011:00(LO10:00)12:0018:00(LO17:00)

・定休日/火曜・水曜・木曜

・その他/小学生未満の入店不可、写真撮影シャッター音以外は携帯マナーモード

 

 

 

 

TEXT&PHOTO/大須賀あい

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