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大ヒット経験を地域に生かす
老舗フライメーカーの挑戦

大ヒット経験を地域に生かす <br>老舗フライメーカーの挑戦

知っているようで知らない、瀬戸内の新しい価値に触れてもらいたい。瀬戸内を代表する「ライフスタイル提案ブランド」を目指していきたい。瀬戸内エリアならではプロダクトを紹介し、ここだけにしかない新商品の開発まで目指す「瀬戸内プロジェクト」がついに発足します。本プロジェクトの中心にいるのは、全国規模の大ヒット商品「イカ天瀬戸内れもん味」を生み出した「まるか食品株式会社」代表取締役社長の川原一展さん。独自の構想を提唱し、新たな瀬戸内発見の創出に注力するのは一体なぜでしょうか。壮大なプロジェクト誕生の経緯や思いを聞きました。

 

 

イカ天れもん味で体験した成功で恩返し

スーパーのおつまみ棚へ足を運ぶと、パステルカラーをベースにした可愛いデザインが目に飛び込んできます。一見、珍味とは思えないパッケージに驚きますが、中身はおつまみの王様、イカ天です。作っているのは、広島県尾道市に本社を置く、昭和36年創業のまるか食品株式会社。2013年に発売をスタートした「イカ天瀬戸内れもん味」は、男性向けおつまみというイカ天のイメージを覆し、女性層から高支持を獲得。2021年現在、累計2000万食を達成し、飛ぶ鳥を落とす勢いで飛躍し続けています。珍味業界のパイオニアは今、なぜ「瀬戸内プロジェクト」を立ち上げたのでしょう。その理由は大きく2つあると言います。

 

「フライメーカーとして進んできた当社は、珍味業界内では高い認知をいただいていたと思います。また、お好み焼き文化が根強い広島ではイカ天そのものも馴染み深いでしょう。しかし首都圏にいけばイカ天の存在すら知らない人が多数。そんな中『イカ天瀬戸内れもん味』は、男性が好むイカ天の枠を超え、珍味業界では過去どうしても届かなかった2030代女性ゾーンにアクセスできました。このレアな能力を使って、何かできないかと考えたんです」

 

 

女性に向け商品開発したローカル土産が全国的に大ヒット、かつロングセラー商品となるミラクルな体験は、業界に旋風を巻き起こしました。しかし一番の喜びは、社員、そして地域にあったといいます。

 

「ヒットのおかげで、会社も大きくなり人も増えビジネスとして成功しました。しかしそれ以上に私が嬉しかったのは、尾道土産としてスタートした当製品を、社員や地元尾道の方々が愛してくれたことです。瀬戸内レモンという地域の特産品を使い、地域に根差した商品で成功し、喜びの和がジワジワと広がっていく様は、私にとって、かけがえのない経験となり財産となりました。瀬戸内エリアには、魅力的な商品を展開する事業者で溢れています。大げさかもしれませんが、『イカ天瀬戸内レモン味』で得た体験やブランド力をもって、地元企業、つまり故郷に恩返しをしたいと思ったんです」

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大で、世の中が変わっていく様子を感じながら、何かしなければいけないという悶々とした気持ちを抱えていたという川原さん。2030代女性に向けたマーケティング力というまるか食品が持つ武器を持って、地域全体に利益をもたらす取り組みへと踏み出したのです。

 

瀬戸内のライフスタイルを提案する「SETOUCHI+」

瀬戸内プロジェクトの要になるのが、ライフスタイルを提案するEコマースのセレクトショップ「SETOUCHI+(プラス)」です。瀬戸内エリアの食品、雑貨、衣類などセレクティブな商品はもちろん、EC サイト用に開発したオリジナル商品も展開します。今後はプライベートブランド開発にも着手する予定です。対象事業者エリアは広島県としまなみ海道の終着点である今治とし、今後少しずつ範囲を拡大していくと言います。

 

 

「『SETOUCHI+』が掲げるコンセプトは『世の中をリノベーションしよう』。古くからあるものを再定義し、新しい価値を加え、未来へと継承する意味を含んでいます。かつ、付加価値の高い商品やサービスを提供し、地域ブランドとして確立させていきたいんです。当社だけが指揮を執るのでなく、地元事業者、そしてお客様と一緒に企画開発を行うなどあらゆるチャレンジをし、地域を包括するブランドのプラットフォームになりたいという野望を抱いています」

 

多様性のある尾道、そして瀬戸内の価値を集結して

当プロジェクトの根幹には、瀬戸内の商品から得られる感動を通じ、ゆったりとした気分を味わってもらい、自分らしさを見つけてほしいとの思いがあります。尾道で生まれ育った川原さんに、改めて地元の魅力を聞いてみました。

 

 

「変わるものと変わらないものがとてもバランスよく同居していることで、独特の文化が形成された街です。忙しすぎず、のんびりしすぎてもいない、ちょうどいい時間の流れを感じられます。尾道には、多様性という言葉がぴったりかもしれません。楽しみ方は、1人1人が決められるんです。ゆっくり街歩きを楽しんでもいい、しまなみサイクリングをしてもいい、ラグジュアリーホテルでゴージャスな時間を過ごしてもいい、つまり遊び方にバリエーションがあります。訪れた人それぞれが感じる異なった価値があり、イメージが定着しすぎていない良さがありますね」

 

変わらないものの中に新しいものを取り入れていく不易流行。日常と非日常、本質と刹那。多くの人が尾道、そして瀬戸内に魅了される理由はそこにあるのかもしれません。

瀬戸内的スローライフを、地域ブランドという観点から切り拓きつつある川原さんの挑戦は、まだ始まったばかりです。

 

TEXTPHOTO 大須賀あい

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