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気持ちが伝わる素朴な温もり
大切なあの人に言葉の贈り物を

気持ちが伝わる素朴な温もり<br>大切なあの人に言葉の贈り物を

ここ最近、ペンや鉛筆を握る時間が足りていないと、ふと気が付きます。スマートフォンやSNSの普及によって、気持ちを伝える手段はデジタル機器へとシフト。

閉塞感を感じる今だからこそ、少し手間をかけて、感謝や祝福の気持ちを添えてみませんか。昔ながらの印刷技術、活版印刷を手掛ける「活版カムパネルラ」から、カードそのものが贈り物になる、優しく温かな紙文具をご紹介します。

 

 

 

デザインと印刷の未来を考えて、活版技術の今と昔を伝える雑貨店

千光寺山の麓、JR線路沿いに建つ「活版カムパネルラ」。もとは美容院だったという古民家を再生した空間には、さまざまな活版アイテムや雑貨が並び、活版印刷体験も行われています。

 

 

代表の上田昇辰さんは、尾道市の出身。大学卒業後、印刷会社に勤めた後、消えゆく活版印刷の魅力に触れてもらいたいと2016年に同店をオープン。建屋には、上田さんのデザイン事務所「カメレオンワークス」も併設されています。

 

 

店名は、宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」に由来。主人公ジョバンニが、活版印刷における文選作業をする作中シーンから着想を得て、その友人カムパネルラの名からとったとか。

 

 

店舗奥に並ぶのは、今はもう製造されていない活版印刷機と、膨大な量の鉛でできた活字です。そのほとんどが、廃業した活版印刷所から譲り受けたもの。遠く北海道をはじめ、全国5県から集まった活版の道具からは、過去に生きた人々の息吹までも感じ取れます。

 

 

知れば知るほど魅力的、凹凸表現の歴史と技術

「カラカラカラ、カシャン。カラカラカラ、カシャン」。店内には、機械の音が心地よくリズムを刻んでいます。手動の活版印刷機を前に、ひたすら手を動かしているのは、スタッフの國近千嘉さんです。2019年、結婚を機に尾道に移住。同店で活版印刷を体験した後、たちまちその魅力に憑りつかれたとか。活版印刷の歴史や印刷工程を、國近さんがお話してくれました。

 

 

活版印刷の起源は、15世紀に遡ります。ドイツ人のグーテンベルクが、活字を用いた活版印刷術を発明。その最初の本格的な書物が聖書だったと言われています。この革新的な技術により、印刷物の生産が可能になったそうです。

しかし、世の中の印刷物が、職人の手によって活字で組まれていたのは、そう古い歴史ではありません。昭和40~50年代まで、印刷の主流は活版。残念ながら、デジタル化などの技術進化とともに衰退の一途を辿っていますが、現代その独特の味わいやデザイン表現が再評価されつつあります。

 

 

まず驚くのは、気が遠くなるような綿密な印刷工程です。活字を一文字ずつ棚から拾う「文選」、その活字を版に組み固定する「組版」、そして手動印刷機の円盤にインクを付けて刷る「印刷」、版をほどいて活字を棚に戻す「解版」。それぞれの工程に、緻密な職人技が求められるのです。

 

 

ただの文具じゃ終わらせない、古くて新しい活版の紙製品

SETOUCHI+」には、「活版カムパネルラ」で人気を博す、手間暇をかけられたメッセージカードやポチ袋などが登場します。

 

 

デザインはスタッフさんが考えたオリジナル。それぞれの紙の質感も異なり、遊び心も満載です。ハンドプリントで印刷しているため、1枚ごと風合いが異なるのも大きな魅力。気持ちを伝える、あらゆるシーンで活躍してくれそうです。メッセージカードとしてはもちろん、ディスプレイやインテリアとしても使っても。

 

 

尾道のんびりねこセットは、猫の街を象徴する尾道ならではの詰め合わせ。活版印刷ならではの独特な猫ワールドに、猫好きさん感涙ものです!

 

デジタル時代だからこそ注目したいプレミアムでアナログな手作り感 

時代の流れの中で、変わらずに積み上げられてきた丁寧な仕事の蓄積が宿る「活版カムパネルラ」。世界から消えゆく技術から生まれる、プロダクトの魅力を上田さんに聞いてみました。

 

 

「やはり、手で作ることの味わいですね。大量生産、大量消費じゃない部分にフォーカスした商品です。活版には色々ルールがあるけれど、正解は1つじゃない。作る人によって、また印刷所によって、それぞれ異なる別の味わいがあります」

 

 

國近さんも続きます。

 

「活版印刷は、自動で出てくるプリンタやコピー機とは違い、インクの浸透や印刷時の力加減が必要です。人間の目でみたときに柔らかく読みやすい、不思議なニュアンスが生まれます。この独特の風合いは、この技術でしか出せないもの。デジタル機器を使ってのコミュニケーションは便利ですが、一手間、そして二手間かけたカードを使って、アナログなやりとりも楽しんでもらえたら」

 

 

世紀を超えて愛され続けてきたものには、それを裏付ける背景や守り続けてきた伝統、愛用してきた人々の存在があります。約600年前に開発されて以来、長きにわたって印刷界を支えてきた活版という技術。そして、上田さんが大好きだと語る、壊して新しいものを作るのではなく、直して作り変えていく尾道という街。

 

そんな土地から生まれる活版の力を借りて、カードに溢れる思いを余すことなく書いてもいい。何も書かず、余白を大事にしてもいい。ゆったりと歌うような印刷機の音を感じながら、大切な人に気持ちを届けてみませんか。

 

 購入はこちら↓

https://setouchi-plus.jp/collections/kappan

 

TEXT&PHOTO/大須賀あい

 

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